時代の流れ、ライフスタイルの変化に伴って、家の間取りにも変化があります。特に2020年はコロナの出現によって、家のあり方や配置などに大きく影響がありました。そんな変化のひとつが、洗面・手洗い場です。以前は脱衣所の一角にあった洗面所が、別に独立させて配置する間取りが増えています。
2021年の間取りのトレンド、むしろ当たり前となりつつある、洗面・手洗い場と脱衣所を別にする間取りには、どんなメリットがあり、どのように取り入れると良いのでしょうか?
ではまず、洗面・手洗い場と脱衣所を別にするメリットを見てみましょう。
コロナ禍にあって、外出先から帰るとすぐに手洗いするというのが、当たり前の導線になっています。手洗いをする習慣があったお宅でも、今まで以上に室内での接触を出来るだけ防ぎ、最短距離で手を洗うという点では、一般的な脱衣所の中にある洗面手洗い器を利用しようとすると、玄関から離れていたり、その部屋に行くまでにドアやスイッチに幾つか触れなければいけなかったりしてしまいます。
しかし、洗面手洗い器のある脱衣所を移動させようと思うと、脱衣所を利用する浴室も一緒に動かす必要があり、大移動となります。そこで、洗面・手洗い場と脱衣所を別用途の空間として捉えることで、間取りの自由度が高まります。比較的狭いスペースで充分な手洗い器だけを別にすることで、帰宅後の手洗い導線を優先させた場所、玄関に出来るだけ近い場所に設置しやすくなるのです。
お客様に手を洗ってもらう際に、洗濯機や洗濯物のある脱衣所を見せるのは嫌という方は少なくありません。洗面・手洗い場と脱衣所を別にしておけば、プライベート空間を保つことが出来ます。
また、家族の帰宅時間など生活リズムが違うと、帰宅して手を洗いたいのに、他の家族が脱衣場を利用していて入れないということもあります。朝の身支度と朝風呂の時間が重なってしまうという家族もいます。実は使う頻度や用途が違う洗面所と脱衣所なのに、同じスペースにあることで使いづらくなってしまっているのです。そのため、別にしておくことで、気を遣わずに、自分のペースで必要な時にそれぞれの空間を利用しやすくなります。
学校や会社に行く朝の身支度の時間が重なる家族が多い家庭では、一般的な四角形の脱衣所の狭い空間では混雑して使いづらいと感じているというのは、よくある話です。一人で洋服を脱ぐための脱衣スペースは前後左右にスペースがとれる四角形が便利なのに対し、大きな動きは必要なく洗面カウンターの前で鏡が見えるように立ちたい洗面所は、前後のスペースより左右に長い方が便利です。特に家族数人が同時に使う場合は、並んで立てるような横長の空間が使いやすい配置かもしれません。
この2つの空間を満たすためには、左右前後に大きなスペースが必要になってしまいますが、別にすることで、それぞれに必要最低限なスペースを確保すれば良いので、混雑を避けられるうえに、間取りも無駄なく使うことが出来るというメリットがあります。
実際に、洗面・手洗い場と脱衣所を別にするうえで、どんな点に注目して間取りを考えると良いのでしょうか?人気の間取りや考え方のヒントをご紹介したいと思います。
コロナの影響を受けて、洗面所とは別に新たに手洗い器を玄関近くに設けるというリフォームが増えましたが、そもそもの洗面・手洗い場を玄関近くに設けることで、手洗い器を2カ所設置する必要はありません。手洗い器を増やすのではなく、洗面所の間取りを変えることを考えてみましょう。
玄関に近く、普段家の中から使う点でも利用しやすい場所として玄関ホールや、廊下に並列して洗面手洗い器を設けるケースは人気の間取りとなっています。壁に埋め込むようなかたちで洗面手洗い器を設ければ廊下に凹凸が出来ることを防げ、通行の妨げにもなりません。また、埋め込んだ裏側の空間を脱衣場にして、洗面手洗い器で出来た凹凸を利用し洗濯機を置いたり収納棚を設けたりすることも出来るかもしれません。洗面・手洗い場と脱衣場を別にしつつも、隣接した位置に設置できて導線がスムーズになるうえに、凹凸を利用した配置が出来て、デッドスペースを作らずにすみます。
結局外出先から帰ってきたらお風呂に直行する、洋服を脱ぐという方にとっては、手洗い器を玄関近くに移動させるだけでなく、手洗い場と脱衣所、浴室全てが近く導線が短い方が便利だと感じるのではないでしょうか?家事導線という点からも、近いことは便利です。しかし、それぞれの空間を別に確保することでプライバシーが守られるというメリットを生かしたいという思いもあるかもしれません。
そのような場合は、わざわざ空間を離す間取りにする必要はありません。洗面脱衣所内に、ドアを設置して空間を区切ることで、状況に合わせて独立した空間として使うことが出来ます。例えば、洗濯機と同じ奥行きのドア幅にして引戸にすることで、普段は洗濯機横にドアを引き込み開放的に使うことが出来ます。来客時や、浴室を利用する家族がいる時だけ、ドアを閉めてプライベート空間を守ることに使えます。
また、洗面・手洗い場を脱衣所と離して廊下に設置するような場合でも、廊下の雰囲気を崩さないために、手洗い器の手前にドアを設けて隠してしまうことも出来ます。壁を作って個室を作ろうとしなくても、ドアを設けることで、空間を区切ったり独立させたり、隠したりすることができます。ドアを上手く使うことで、階段下などのちょっとしたスペースでも使える場所があることに気づくかもしれません。
脱いだ服を手洗いすることが多かった昔のライフスタイルと違って、現代の全自動洗濯機がある生活や、コロナ禍で帰宅後の手洗いが重要視される生活では、洗面・手洗い場と脱衣所を同じ空間にする利便性は低いと言えます。むしろ別にすることで、導線を短くすることやデッドスペースを作らずにすむこと、プライベート空間を守れるなどのメリットがあります。
家族のライフスタイルや導線を考えたうえで、洗面・手洗い場と脱衣所を別にするという2021年のトレンドとなりつつある間取りを取り入れてみるのはいかがでしょうか。