リノベーションでは、内装や間取りなど、目に見える場所の計画はしやすいものですが、目に見えない部分に関しては、それほど重要性を感じないかもしれません。しかし、目に見えない部分のひとつ、壁下地補強をリノベーションで入れなかったことで、住み始めてからや、数年後に後悔したという方は少なくありません。
後悔のないリノベーションにするために、なぜ壁下地補強をリノベーションで入れておくべきなのか、どんなところに必要なのかについてご紹介したいと思います。
そもそも壁下地補強とは何でしょうか?なぜ必要で、リノベーションと、どのように関係しているのでしょうか?
壁は表面状、何かを張ったり取り付けたりできる面になっていますが、柱を挟むように9~12mm程のボードが張ってあるだけで、柱が無い部分は空洞になっています。そのため、12mm以上の長さの釘やネジを使って壁に何かを取り付けようとすると、空洞部分には受けが無いので留めることが出来なかったり、強度が弱くなったりしてしまいます。そこで、空洞部分にネジや釘が打てるようにするためには、壁に下地を入れて補強する必要があります。そのことを、壁下地補強と言います。
構造上では下地補強は必要がないので、全ての壁に入れる必要はありません。壁に何かを設置や取付けをする場所にのみ必要になるので、基本的には、設置場所の壁全面ではなく、ネジや釘を打つ場所だけでも十分です。
下地を入れるのは、壁の内側なので、下地補強工事が終わったら、クロスや珪藻土などで表面を仕上げる必要があります。そのため、部分的な下地補強のためだけに壁を解体して、内装を張り替えるなら、リフォームした部分だけ新しい仕上げとの継ぎ接ぎになってしまいます。だからと言って、見栄えを良くするために、補強の必要がない壁まで内装リフォームをするなら、リフォーム範囲は広く、費用も高くなってしまいます。しかし、間取りを変えるようなリノベーションのタイミングであれば、壁を撤去したり新設したりする際に下地を入れやすいですし、内装材も一気に新しくするので、一石二鳥の工事になります。
また、壁には配管や配線が通っていたり、表面にはスイッチやコンセントがついていたりもします。そのような場所には、何かを取り付けることが出来ませんし、移設するなら、工事も大がかりになってしまいます。その点、リノベーションの際には、使い勝手や今後の暮らし方などをじっくり考える機会です。どこに何を設置するか、それに伴って配管や配線の位置も決めます。そのため、間取りや内装のデザインも合わせて、どこに下地補強を入れておくと良いかを考えやすい時と言えます。
見えない部分ですが、工事が必要なので、リノベーションの打ち合わせの際には、具体的に何を取り付けたいのか、現状だけでなく、将来取り付ける必要があるかもしれないものも含めて伝え、壁下地補強を入れておいてほしい場所を工事前に決めておきましょう。また、リノベーション後に見えない部分になるので、確認や伝達ミスを防ぐために、図面の中に補強箇所を記載してもらうと安心です。
リノベーションの際に下地補強を入れておくのであれば、すぐには必要ないとしても将来を想定して必要になる場所を決めておく必要があります。リノベ経験者が入れておくと便利だった場所や、入れずに後悔した場所から学んでおきましょう。
キッチンの背面にオープン棚を付ける場合や、カウンターを設置する場合など、既にリノベーションの際に設置されるものに関しては、自動的に大工さんが取り付け箇所に補強工事を行います。しかし、リノベーション時に大工さんによる工事が必要なく、家具や荷物を搬入、設置後に自分で取り付けたいものや、将来必要になるものに関しては、伝えておかない限り下地補強はなされないので、事前に伝えておく必要があります。例えば、下地補強が必要となる場所や物は下記の通りです。
テレビ 時計 棚 フック 絵 ピクチャーレール 鏡 ギター 自転車 などを設置、置きたい場所の壁
テレビや時計、鏡など実用性が高いものや、家具の配置に影響があるものに関しては間取りを決める際に、取付位置を具体的に決めておくと便利です。また、収納スペースが増えることを見越して棚やフックを取り付けられるように、玄関の土間や洗面所、トイレ、ウォークインクローゼット内、階段下に補強を入れておいて良かったという方は少なくありません。
今すぐは必要がない物でも、将来必要となるものとして、手すりがあります。リノベーションによって、長く住み続けられる家にしたのであれば尚更のこと、高齢になって足腰が弱ってしまっても、住みやすい家にするために、手すりを取り付けられるように壁下地補強をして備えをしておきましょう。特に、下記の壁に入れておくと安心です。
・トイレの壁:便座からの立ち座りのための縦手すりや、可能であればL型手すりが取り付けられる位置に補強をしておきましょう。
・階段の壁:階段の両脇の壁に手すりを取り付けられる幅が無いのであれば、下りの際に利き手となる壁だけにでも補強を入れて手すりを設置できるようにしておきましょう。
・玄関や廊下の壁:玄関からホールの段差部分に縦手すりがあると上り下りに便利です。また、移動のために廊下に横手すりがあると安心なので、手すりの設置高さに下地を入れておきましょう。
介護改修やバリアフリーリフォームでは、補助金も出るので、リフォーム費用は気にならないかもしれませんが、前もって下地が入っている場所に手すりを取り付ける工事と、壁を壊して下地補強を入れたうえで手すりを取り付ける工事では、工事の規模や期間が変わってきます。自分が高齢になったり、看病や介護が必要な家族を看たりしながら、大がかりなリフォームに対応するのは、時間も体力も奪われます。リノベーションのタイミングで、将来に備えた補強を行っておけば、手すりが必要になった時に取り付けが比較的に簡単に行え、先の後悔を防げます。
壁に何かを取り付ける場合、壁の内側に下地補強が入っていなければ、安全に取り付けが行えません。必要になったタイミングで壁下地補強工事を行うことは出来ますが、大がかりなリフォームになってしまう可能性があるので、間取り内装を大きく変えるリノベーションの際に、必要な箇所に下地補強を入れておきましょう。そのため、リノベーションのプランニングの際には、どこに何を置くかを具体的に考えることや、収納を増やしたり、レイアウトを変えたり、手すりを取り付けるといった先のことを想定した計画が重要です。
壁下地補強という見えない部分ですが、大切な家に長く快適に住むためにリノベーションで忘れずにしておきたい工事のひとつです。